嘘八百B派遣会社(10)「資料作成とかコピーとりとかしてますよね?」
数日後、今田が急に職場へやってきた。
フロア入り口の内線から「今ちょっといいですか」と電話をよこしてきた。
ちょっといいですか。ちょっと具合にもよるんですけどいきなり来るな。
仕方なく私は上長へ離席すると伝え、今田をフロア内のパーテーションで仕切られているだけの打ち合わせスペースに通した。
今田「来月からのお仕事なんですけどねぇ、お隣の部署に行っていただくんですよ〜」
はい。当たり前のように言わずにまず契約時点の話と違うことを謝罪しろ。
ていうか隣の部にいる派遣さんはどうすんだよ。と聞いてみたところ。
今田「彼女はちょ〜っとお仕事できないんですよね・・・問題はないんですけど黒井さんの方が評判がいいので、彼女には別のところへ行ってもらおうと思っているんです」
出た出た。お得意のおべっか。
褒められれば気をよくするとでも思ってんのかコイツは。
だいたいなんで派遣会社が派遣を自由に動かせること前提な訳?
今田「でも隣に異動しても黒井さんのお仕事内容は今と絶っ対に変わらないので!そこだけはもう本当に安心してください!」
相変わらず矛盾したことを強調する男。
それが腑に落ちないから今日説明に来てくれたんじゃないのか。
黒子「部署が変わって仕事内容が変わらないわけがないので変だと林さんに言ったんですけど」
今田「いえいえ!お仕事内容は変わらないんですよ〜。黒井さんは今、社員さんに頼まれて資料作成とかコピーとりとかしてますよね?」
歯。
してませんけど?
だがしかしなるほど。意味がわかった。
今田は現場の仕事内容を確認していない。
事務派遣は皆、社員の指示に従って資料作成とコピーを取るものだと思っているのだ。
だが私は産休中の立木さんのお仕事を丸々引き継いでいたので担当業務があった。
ていうか今田、産休代理すら把握していない適当さ。
私は「そんなことしてません!!」と憤慨して業務内容を説明した。
すると今田はあっさり認めた。
今田「あー・・・でしたら仕事内容変わりますね。すいませんっ」
軽い。謝罪が軽い。
黒子「すいませんじゃないですよ。契約時から何度も安心してくれ大丈夫だって言われ続けて結局大丈夫じゃなかったじゃないですか!!」
今田「すいませんっ」
すいませんという言葉を並べればいいと思っていそうな謝罪で本当に軽い。
超ウルトラスーパーライト。
もう9月に入っているのに来月は仕事内容が変わるという知らせが遅すぎる。
そして今からまた派遣先を探すのも手間だ。
結局B派遣会社の言い成りになるようで悔しかったが、私はブチ切れながらも百歩譲って隣の部では何をするかを聞いてみたのだが。
今田の回答に私は更にブチ切れた。