黒子の黒い腹のうち

ひいた男、ムカつく女。

お嬢サト子の裏切り(16)誘導尋問

kuroikuroko.hatenablog.com

 

高校卒業後、何年もの月日が経ち、年に数回しか会わなくなったサト子は私の誕生日を忘れていた。

 

私は覚えていたのでサト子の誕生日には少なくともメールでお祝いを送った。

 

「ありがとう!すごく嬉しい!」なんて返事はくるものの、それでもサト子は私の誕生日に連絡をくれることは一切なかった。

 

私は友達に誕生日をあまり覚えてもらえないため、親友や彼氏にはちゃんと覚えてて欲しかったし最低限のことはして欲しかった。

 

あまり”祝って”オーラを出したり、自分から「私の誕生日この日なんだけど」なんて言ってしまうとかまってちゃんみたいで嫌だったが、伝えないと始まらないとも思っていた。

 

 

ある時サト子の誕生日近くに会うことになったので、私はプレゼントを用意した。

 

断っておくが見返りを求めてプレゼントしたのではない。

あくまで純粋にサト子の誕生日を祝うつもりだった。

 

だがしかし「これで私の誕生日も気にしてくれないかな」という淡い期待もあったのは事実。

 

もう10年近く付き合ってるしな。

友達とはお互いの誕生日を祝いたいもんだ。

 

サト子はプレゼントをすごく喜んでくれた。

 

 

その後、再びサト子に会ったのは半年後だった。

 

サト子「黒子この前私の誕生日祝ってくれたよね。ありがとね。

彼氏に話したんだけど、これは私からもお祝いしないとダメだよねって言っててー、彼氏も絶対祝うべきだよって言っててー・・・」

 

チラッとこちらを見るサト子。

 

黒子「あ、そうなんだ。」

 

で???

 

サト子「・・・お祝いしたいなってなったんだけどー」

 

チラッ。

 

黒子「? ありがとう。」

 

で???

 

なんだろう。なんか煮え切らない。

 

サト子はそこから先の発言をしようとしない。

 

なんだ。結局何が言いたいんだ。と思っていたら。

 

サト子「えっとー・・・黒子って誕生日夏だったよね?」

 

黒子「そうだよ」

 

そうだけど何。

 

サト子「えっと・・・何月だっけ? ×月だったよね・・・?」

 

月だけ聞くか。しかもハズレ。

 

黒子「○月だけど・・・」

 

サト子「あっは!!(笑)」

 

急にサト子がめちゃくちゃ笑い出した。

 

サト子「何日だっけ?(笑)」

 

なるほど。意味がわかった。

 

サト子は自分が黒子の誕生日を忘れたとは言いたくなかったのだ。

なのでできるだけ会話で導いて、私の口から自然に誕生日を吐かせたかったわけだ。

 

ていうか今更ー。

あんたが私の誕生日覚えてないことくらい何年も前から分かってましたけど。

 

素直に「ごめん誕生日いつだか教えてくれる?」とか言えばいいものを回りくどく言いやがって。

 

しかも私の口から自然に吐かせることで、自分は友達の誕生日を忘れていた事実をあわよくば知られないようにしたいときた。

 

無傷で欲しい情報だけゲットしようとしたわけだ。

 

サト子らしい。

 

つーか今の会話で私から吐けるか。

誘導尋問したいならもっとマシな会話を用意しやがれってんだ。

 

内心相当悪態をついたが、私はサト子に誕生日を伝えた。

 

その年は流石に直接会ってプレゼントも用意してくれたが、その後はまたしても例年通り私だけが祝いのメールを送ったりプレゼントを用意するだけとなり、サト子の中からは再び私の誕生日は消え去ったようだった。

 

驚いたのが、私の誕生日の翌日に会う約束を取り付けといて

「そういえば誕生日お祝いし合ったねぇ。ああいうのってまたやりたいよね!」

と言われたことがある。

 

おい。前日が私の誕生日だったんだけど。って話も実は会話にあっただろうが。

お前聞き流しただろうが。

お祝いし合いたいってお前は大して祝ってくれたことないけどね。

またやりたいってお前次第だと思うけどね。

 

高校卒業後に穏やかになったと思っていたサト子。

本質は変わってなかった。

 

やっぱりサト子はサト子だった。

 

出会った頃は失礼なお祝いだったとはいえ、お祝いしたいというサト子の気持ちは嬉しかったんだけどね。

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サト子の中で私はもう300円の価値すらなかったのかもしれない。