お嬢サト子の裏切り(6)男の為に友達を利用する女①
サト子は自分が損をしないように頑張る女だ。
そして自分が手に入れたい物の為なら散々周囲を巻き込む。
どんなに失礼があっても、どんなに厚かましくても、周りの迷惑を省みず、自分の利益しか考えていないのがよく分かる。
要するに周りが見えなくなるタイプだ。
こと恋愛においては特に顕著だった。
当時のサト子はとにかく男の尻を追っかけ回していたイメージがある。
私に男友達がいないのを知っていたため私には何も言ってこなかったが、他の友達たちには頻繁に「男の人紹介して」とか「合コンセッティングして」とか頼んでいたらしい。
もちろん紹介されなくともプライベートで知り合った男性の話を色々と聞かされたりもした。
ある時サト子は学校の男子生徒に興味を持った。
「A君て人が気になる」と本人から直接聞いていたし、彼が視界に入るたびに「黒子!!」と目を輝かせて私に逐一報告してくる。
正直言うと面倒くさかった。
この男子生徒は名前を知っている程度で話したこともない。
サト子が見た目だけで興味を持っただけだった。
そしてA君に興味を持ったのも束の間、今度はB君がいいと言い出した。
そんな調子で男に興味を持っては目をキラキラさせるサト子を見て、男の話しかしないサト子にうんざりしていた。
しかし。
サト子に新たな出会いが訪れた。
どう知り合ったかまでは覚えていないが、ちょっと変わった通学をしている男子生徒がいた。
名を川上君(仮)という。
私たちが通っていた高校は通信制のため、普通の学校と違って毎日来る必要はない。
この川上君はある進学校を中退し、高校卒業の資格取得のために当校に入学したクチだった。
卒業に必要な在籍期間だけが不足していたらしく、単位取得はほぼ必要なし。
そのため、月1程度の決められた日だけ当校してくるというスタイルだった。
彼は大学受験を目指しており、保険のつもりか大検も受験済みだった。
川上君は元は進学校に通っていただけあって頭がいい(らしい)。
身長が180センチほどで細身。
顔は別にカッコよくはなかったが、サト子は彼に夢中だった。
私は川上君がどの人かも知らないうちから、サト子が口を開けば「川上君川上君」言うのでだんだんイライラしてきた。
サト子の口からは男の話しか聞かない気がしていたのだ。
そしてある時ついに川上君とご対面した。
サト子に「黒子、(こちらが)川上君」と紹介され、「(どうも)黒井です」と会釈したのだが、川上君はニコリともせず頭をちょっと下げただけだった。
感じ悪いしカッコよくもない。せめて自分の口で「川上です」くらい言えば?
それが彼の第一印象だった。
しかしサト子は目をキラキラさせて一生懸命川上君に話しかけている。
その場にいるだけでものすごく面倒くさかった。
紹介してくれたのはいいけど完全に蚊帳の外。立ち去ってもよろしいでしょうかって感じだった。
そしてある日、川上君のことでサト子に完全に利用されてしまった。
つづく