お嬢サト子の裏切り(1)クーポン券を知らない女
”裏切り”はニュアンスが違うかもしれない。
サト子(仮)は高校からの友人で、医療一家・三人姉妹の末娘だ。
サト子の父親は開業医。結構大きな病院を経営している。
長女は医者、次女は薬剤師となり、サト子自身も最終的には医療関係の仕事に就いた。
10年来の私の大親友。
だと思っていたが、数年前に青天の霹靂でまさかの疎遠となってしまった相手だ。
このサト子と疎遠になるまでの彼女についてのびっくりエピソードをご紹介。
サト子との出会いは高校生の時。
私たちは通信制の高校に通っていた。
通信制の高校というのは大学みたいな感覚で、履修した授業について単位取得していけばよい。
当然クラスはない。
きっかけこそ忘れたが、サト子とは意気投合し、ほぼ毎日一緒に過ごしていた。(実は連んでいた友人はもう1人いる)
なんとなくだがお互いシンパシーを感じていたのかもしれない。
サト子は世間知らずというか箱入りというか、結構ケチで図々しい・・・厚かましい?
とにかくちょっと物の感覚が違うなと感じることが多々あった。
それ故、当時は何度もびっくりさせられた。
当時、学校の近くに某有名ファストフード店があり、私たちは帰りによくそこへ立ち寄って駄弁っていた。
本当によく立ち寄っていた。
ある日、レジで商品を受け取るとトレーにクーポン券が置いてあった。
複数の商品のクーポンが1枚になっていて切り取って使用するやつだ。
席に着き、クーポンに気づいたサト子は
「何これ?」
と興味津々。
両手でしっかり顔の前に持ってきて凝視している。
黒子「あ、クーポン?会計時に出したらその商品が書かれてる金額に割引されるんだよ」
なんて、懇切丁寧に説明してやったが、そんなの見りゃわかるだろっていうか知ってるだろと心の中でツッコミを入れていた。
ところが。
サト子「へぇー!便利だね。」
とマジマジとクーポンを見つめるサト子。
いやいやいや・・・・・知ってるでしょ?
よく街中でも貰うし、いくらあんたがお嬢でもそこまでかけ離れた生活送ってないんだから見たことあるでしょ??
つーかこの店何度も来たじゃんよ。
黒子は心の中で「まさか」を繰り返していた。
but。
サト子「いいねこれ!帰りにまた貰って帰ろー」
歯。
”また貰って帰る”????
いやいやいや・・・・!!!!
「ちょーだい♡」って言って貰えるもんじゃないから!!
あくまでお店を利用してくれたお客さんに対するお店側のサービスじゃない?
”本日はご利用ありがとう・次回もぜひ当店をご利用ください”とかそういう意味じゃない?
求めれば貰えるんだったら誰だって貰うわ!!!
このサト子の発言には心底驚いた。
そしてこのモヤモヤ感をどう伝えていいやら言葉選びに困ってしまった。
黒子「いや・・これは”ください”って言って貰えるもんじゃないから;商品を買ってくれた人に対して”次回もぜひご利用ください”っていうお店側のサービスっていうか・・・」
この世間知らずで図々しい女め。
と言ってやりたかったが、それを言わずして何と言えば彼女の非常識さを分かってもらえるか、この後の言葉が続かなかった。
サト子「ふーん・・・そうなんだ。」
あまり分かっていない様子でまだクーポンをマジマジと見つめるサト子。
当時17歳。
クーポン知らないとか絶対絶対ないから!!