面倒なバツイチ男⑽ 送別会後の余談
少し余談を挟む。
送別会がお開きとなり、各々がお店の出口でたむろしていた時だった。
酔っ払って上機嫌の部長が、M氏にとんでもない事を言ったのだ。
「よぉM!おまえ家庭は円満か〜!?」
一瞬、M氏の表情が固まった。
私も固まった。
”M氏の家庭の事情には触れてはいけない”
これは部内の暗黙の了解。
”M氏が離婚したかは不明だが、子供と奥さんとは別居中”
これが皆が共通で理解している事だ。
部長、もしかして知らないの・・・?
M氏は、今までにないくらい小さな声でボソボソと何かを答えていた。
「実は・・・・・・・で・・・・・・」
「マジで!?いつ??」と部長が飛び退きながら更につっこむ。
「今年・・・です」
またボソボソとM氏は答えていたが、なんとなくそう聞き取れた。
おそらく隣にいる私に聞かれたくなかったのだろう。
その後も部長が何か聞くたびにM氏はボソボソと答えていた。
M氏は何がなんでも公にしたくないようだが、もう皆なんとなく知っている。
あなたにめちゃくちゃ気を遣って触れないようにしているんだけど。
今の会話からすると離婚は確定したように思えた。
今まではそれすらよく分からなかったのだ。
わざわざ公にする必要はないし、言いたくないのも分かるが、M氏の場合はもうはっきりしろよって感じだった。
話したがらないくせに、自分からその内容に触れることがあるからである。
そこが面倒くさい。
割とハキハキ話すタイプなのに、今回のように他人にズバリ聞かれた時だけ小声になるのもカッコ悪い。
いつまでも「自分、訳あって独身です」と言うのだ。
「バツイチです」とか「離婚しました」等言ってくれた方が周囲もそれ以上は悟るだろう。
「訳あって独身」しか言わないくせに自ら家庭の話を持ち出すから面倒なのだ。
更に言えば、そんな状態なのに恋愛においてグイグイくるのも面倒だ。
あなたは離婚が決まって次の恋愛を始めたいのかもしれない。
だが好意を持たれた方は、事情がはっきりしない上にありがた迷惑ばかりで参っているのだ。
恋は盲目。
おそらくM氏は他人が気遣っていることに気づいていないのだろう。
つづく