面倒なバツイチ男⑻「自腹で帰ってきたから」
派遣契約が切れるのは3月末。
1ヶ月前に私が契約満了することが知れ渡り、送別会をしてくれるとの話になった。
私が関わっていた部員はプロジェクトの関係でほぼ全員長期出張中。
オフィスに残っている社員は電話を取り次ぐだけであまり知らないし、ほとんど喋ったことがない・・・
実際にいた期間も半年未満だし、送別会でアウェーは嫌だ。
そんな理由でお断りしてみたが、幹事を勤める新卒女子に押し切られてしまった。
「いえいえ!送別会をぜひやらせていただきたいんですよ!」と。
「でも」と2回目断りを入れようとしたが、同じように押し切られてしまった。
知らない人だらけで自分が主賓なんて気まずい・・・
今から送別会が億劫だったが、もっとひどいことになった。
主賓は私だけではなかった。
私の契約満了と同時に他部へ移動となった年配の社員も主賓だった。
送別会出席リストを見ると、この年配社員の知り合い中心に集まったらしく、どこの誰?って人ばかりだった。
もう”自分の所属部でも知らない人ばかり”どころではない。
そんな中、長期出張からちょうど帰ってくるから参加するという部員もいた。
この部員がいたからといって何か助かるほどの知り合いではないが、まぁ少しでも知ってる人がいるだけマシかなと思った。
そして最終出勤日・送別会当日。
私は長期出張中の部員の逆出張等のスケジュール管理もしていたので、誰がいつ帰ってくる等把握していたが、予想外の人が急に帰ってきた。
そう。M氏である。
これは驚いた。
いや・・・もう少し厳密に書こう。
M氏のことだから私の送別会には来るだろうと思っていたが、M氏の逆出張の連絡はなかった。
まずはそれが意外だった。
今までの言動からしてM氏は私に好意を持っており、恋愛においてはグイグイ来るタイプだ。
なのに私の最終出勤日に戻ってこないことが意外だったのだ。
だが実際は帰ってきた。
何も事務連絡がないまま急に帰ってきたから驚いたのだ。
「出張のご連絡いただいてなかったですけど」と聞くと、
「だって自腹で帰ってきたから」とのこと。
どういうことかと言うと、出張で会社から旅費が出るのは何日に1回という規定があり、前回の出張が割と最近だったため今回の分は会社から旅費は出ず、自腹で帰ってきたというのだ。
しかも「この日のために帰ってきた」と、告白もしてないくせにまたストレートな表現をする。
「この日のため=私の最終出勤日」以外に何があるというのだ。それしかないじゃないか。
でも送別会の出席リストにM氏は載っていなかったと記憶している。
再度見てみると、いつの間にかM氏の名前が記載されていた。
なんだか複雑だった。
オフィスではM氏とは隣の席で、一番お世話になったし話した仲だが、何度も言っているように好意を持たれるのだけは迷惑だった。
1人でも話ができる人が参加してくれてありがたいような、それが恋愛がらみだからだと迷惑でもあり・・・
兎にも角にも送別会、悪い意味でドキドキしていた。
つづく