黒子の黒い腹のうち

ひいた男、ムカつく女。

面倒なバツイチ男⑴「自分、訳あって独身です」

ある派遣先で、ものすごく面倒な男(M氏)に好意を持たれたことがある。

 

M氏は30代前半でIT企業勤務。

東出昌大ペ・ヨンジュンを足して2で割ったような容姿。

 

子持ちでバツイチ・・・と思われるが、

決して「離婚」「バツイチ」のワードは出さない。

 

あくまで「訳あって独身です」。

 

離婚協議中でまだ確定していないのかとも思えたが、まぁそこは問題ではない。

 

あまり言いたくないのも分かる。

 

社内でも暗黙の了解で、「アイツは離婚したっぽいけど触れてはいけない」と皆気を遣っていた。

 

彼が言うには仲のいい数名には事情を話しているとのこと。

 

 

私がそれを知ったのは、隣の席だったから。

 

それまでどう見ても、いかにも未婚の独身ですという風にしか見えなかったが、ある時デスク上の子供の写真に気づいてしまった。

 

1、2歳の男の子の写真。

 

へぇー子供いたんだ。

ていうか結婚してたんだ。

 

そんな印象だった。

 

 

そして後日、M氏との会話で、恋人がいるのかどうかの話になった時、

「Mさんご結婚されてるんですよね」

と言ってみたところ、M氏はひどく動揺し、目を泳がせた。

 

「え、なんでそんなこと聞くの」とか「なんで知ってるの」みたいなことを言われたと思う。

 

私は机の上の写真を指し、

「あれMさんの子供さんじゃないんですか?」

と言った。

 

するとM氏はまた目を泳がせて、

「あ、はい。あれは自分の子供ですけど、今訳あって独身です。」

と言った。

 

あーなんかマズイことに触れたなと思い、謝った。

 

M氏が言うには、

「まぁ社内の人たちもなんとなく知ってて触れてこないようにしてるんだと思う」

「本当に辛い思いをしたから他人にはなかなか話せることじゃない」

「お酒で酔っ払って気を良くしたら喋っちゃうかも」

と、割と明るく話してくれた。

 

ちょうど数日後に飲み会の予定があった。

 

 

つづく